WAF運用の課題を徹底解説!誤検知対応やチューニングの負担を軽減する方法も紹介

WAF運用の課題を徹底解説!誤検知対応やチューニングの負担を軽減する方法も紹介

近年、WebサイトやWebサービスを含めたWebアプリケーションを狙ったサイバー攻撃が増加しているため、WAF(Web Application Firewall)を導入する企業が多くなっています。

WAFはWebアプリケーションへの攻撃を防御するのにとても有効な手段ですが、導入後の運用課題を抱える企業も少なくありません。

この記事では、WAF運用における課題や効率的な運用方法について詳しく解説します。

そもそもWAFとは?

WAF(Web Application Firewall)とは、Webサイトを含めたWebアプリケーションの脆弱性を突く攻撃を防御できるセキュリティ対策サービスです。WAFを導入することで、情報漏えいやWebサイトの改ざんなどの被害を引き起こすサイバー攻撃を防ぐことができます。

攻撃を防ぐために最も重要なのはWAFのシグネチャです。シグネチャとは、不正アクセスやサイバー攻撃に使われる「特徴的なパターン」をまとめた定義ファイルのことです。

WAFは、Webアプリケーションへのアクセスをシグネチャと照合し、合致したものを悪意のあるアクセスとして判断し遮断します。

WAFのシグネチャについて詳しくはこちらの記事

WAFのシグネチャとは?仕組みや更新方法も含めてわかりやすく解説!

WAF運用の重要性:導入するだけでは不十分

WAFの効果を最大限に発揮するためには、導入後の適切な運用が必要不可欠です。ここでは、WAF運用における3つの重要なポイントを解説します。

誤検知がないようにルール(シグネチャ)チューニング

誤検知とは、WAFが正常な通信を不正なものとして誤って判断し、遮断してしまうことです。誤検知によって通常の利用者がWebサイトにアクセスできなくなるため、売上機会の損失や顧客の信頼を失う恐れがあります。

そのため、誤検知が発生しないように適切な対策が必要です。

例えば、新しいシグネチャを公開する際は、WAFの検知モードを活用する方法があります。検知モードでは通信を遮断せずに検知のみを行うため、誤検知が発生していないことを確認してから遮断モードに切り替えることで、誤検知による正常なアクセス遮断の発生リスクを抑えることができます。

また、万が一誤検知が発生してしまった場合に備えて、誤検知の原因を迅速に特定し、シグネチャの新規作成やチューニングなどの対処ができるような体制づくりも重要です。

シグネチャの定期更新

日々増加する脆弱性や巧妙化する攻撃に対応するため、WAFのシグネチャを定期的にチューニングし更新する必要があります

IPA(情報処理推進機構)の発表によれば、2023年にはWebサイトに関連する脆弱性が407件新たに発見されました。これは1日に1件以上の新しい脆弱性が発見されている計算になり、とても深刻な状況を示しています。

WAFが新しい脆弱性にも対応できるように、脆弱性や攻撃に関する最新情報を常時収集し、収集した情報を分析して適切にWAFのシグネチャに反映する必要があります。

検知状況の確認と分析

導入したWAFの効果を確認するために、WAFの検知状況を定期的に確認し分析することが重要です。検知状況を分析することで、自社のWebアプリケーションがどのような脅威に直面しているのかを具体的に把握することができます

セキュリティ脅威を把握するために、例えば下記のような検知情報を確認・分析することがおすすめです。

  • 攻撃の量:日々どの程度の攻撃を受けているのか
  • 攻撃の種類:SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)など、どのような攻撃が多いか
  • 攻撃元の情報:どの国や地域から攻撃が来ているのか
  • 攻撃の時間帯:どの時間帯に攻撃を受けやすいのか

このようなWAFの検知情報を継続的に確認・分析することで、次のセキュリティ対策につながる可能性があります。例えば、特定の国や地域からの攻撃が増加傾向にある場合、そこからアクセスをすべて遮断するという対策を講じることができます。

さらに、攻撃傾向の変化を把握し、将来的なリスクを予測することで、先手を打った中長期的なセキュリティ戦略の策定にも役立ちます。

WAF運用における主な課題

WAF運用の課題を徹底解説!誤検知対応やチューニングの負担を軽減する方法も紹介

WAFの効果を最大限に発揮するためには適切な運用が必要不可欠ですが、WAFの運用は簡単ではありません。

ここでは、WAFの運用における2つの大きな課題を詳しく解説します。

セキュリティ人材の不足

WAFの運用においてシグネチャのチューニングや追加が必要不可欠な作業ですが、これらの作業にはセキュリティに関する高度な専門知識が求められます。

しかし、セキュリティに詳しい人材が不足しているため、多くの企業にとってセキュリティ人材の確保が大きな課題となっています。

世界最大のサイバーセキュリティ専門家資格の非営利団体ISC2の2023年の調査によると、日本では約48万人のセキュリティ人材がいて、2022年に比べて23.8%増加した一方、セキュリティ人材の需要も33%ほど増加し約59万人にまで上りました。

需要の急増によって、11万人ほどのセキュリティ人材が不足となり、人材不足の問題が年々深刻化しています。

深刻化するセキュリティ人材不足を受け、多くの企業ではWAFの運用を含めたセキュリティ業務を情報システム部門や開発部門が担当せざるを得ない状況が生まれています。兼務で多忙の上にセキュリティに関する専門知識がないため、WAFの運用がおろそかになるケースも少なくありません。

WAF運用は業務負担が大きい

WAFの運用において、検知や遮断したアクセスの情報の確認と分析が重要な業務となります。ただし、WAFの検知ログの量が非常に多く、場合によっては百万単位に達することもあるため、運用担当者にとっての負担がとても大きくなります

しかも多くの企業では、セキュリティ人材の不足によってWAFの運用を情報システム部門や開発部門などが兼務で行っていることが多いのが現状です。本来の業務でも多忙な中、これほど膨大な量のWAFログをすべて確認し、分析することは現実的に困難です。

さらに、WAFログを分析するために、新しいツールやサービスを導入する必要が出てくる場合があります。新しいツールの使い方を習得することも、WAFの運用担当者にとっては追加の業務負担となってしまいます。

WAF運用を楽にする方法:クラウド型WAFの活用

WAF運用の課題を解消するための1つの方法として、クラウド型WAFの活用が注目されています。クラウド型WAFを利用することで、WAFの運用負担を軽減しつつ、高度なセキュリティ対策を実現することができます。

クラウド型WAFを活用するメリット

クラウド型WAFとは、インターネットを経由して利用するWAFのことです。従来のWAF運用における多くの課題を解決でき、効率的かつ効果的なセキュリティ対策をクラウド型WAFの導入によって実現できます。クラウド型WAFを活用する主なメリットは以下の点が挙げられます。

  • WAFの運用業務が楽に:WAFのシグネチャのチューニングやメンテナンスはすべてWAFの提供ベンダーが行うので社内での運用はほぼ不要です。
  • 誤検知対応も楽に:誤検知の原因特定や修正はWAFの提供ベンダーに依頼できることが多いので、企業側は顧客対応に専念することができます。
  • セキュリティリスクを把握可能:検知状況を一目で把握できる管理画面を提供するクラウド型WAFもあるため、管理画面を確認することで、受けている攻撃の詳細を理解でき、難しい分析を行う必要なく直面するセキュリティ脅威を把握することが可能です。
  • 導入工数が低い:DNSを切り替えるだけで導入できるクラウド型WAFもあるため、従来のWAFに比べてクラウド型WAFの導入工数は非常に少なくないです。

さまざまなメリットがあるため、クラウド型WAFがWAF導入の主流になりつつあります。

クラウド型WAFの選定ポイント

さまざまなクラウド型WAFの中で、自社に合ったサービスを選定することが重要です。以下ではクラウド型WAFの選定ポイント3つを紹介します。

  • 運用の実績:新しい脅威に対応するためにシグネチャの迅速な更新が求められるため、新しい脆弱性が発表されてから対応までの時間が早いWAFを選んだほうが良いでしょう。
  • サポートの範囲と質:WAFの導入や運用で、問題が発生した際にすぐに解決できるようなサポート体制を持つクラウド型WAFを選びましょう。また、海外ベンダーのサービスの場合、日本語サポートの有無とサポート時間の確認も必要です。
  • 管理画面の充実度:WAFの効果を把握するには、管理画面を確認することが必要なので、直感的なダッシュボードや詳細なレポート機能を提供するWAFベンダーを選ぶことで、運用効率の向上につながります。

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